伊藤のささいな呟き

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映画が見たくなったので、ミニシアターでチリ映画を観た

大学院生の時に、かっこつけようと思って、ミニシアター に何度か行ったことがあります。自分の考え得る限りの知的な雰囲気を醸し出しながら、コンビニで意識高い目の人がよく持ってる高いジュース買って、ダークグレーのワンピース+靴先の尖った赤い靴っていう服装で行ったんですよ。こう、ニッチなエンタメに詳しい大学院生像に憧れみたいなのがあったのかもしれないですね。ミニシアターでやってる映画って、大きな映画館とは違って、かなり深く社会問題を取り扱ったものとか、ちょっと過激なやつとかもありますから、そうゆう人とは違うものを観たいって気持ちもあったと思います。まぁ、段々とミニシアター に足を運ぶ回数が増えるにつれて、服装も飲み物もいつものものに変化しましたが。今回、映画を観に行くときもジーパンにTシャツというラフな格好で行きました。

 

さて、今回観た映画はチリ映画。タイトルと監督、あらすじは以下の通りです。

ナチュラルウーマン(原題:Una Mujer Fantástica)

監督・脚本:セバスティアン・レリオ(Sebastián Lelio)

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チリの映画の特徴などはさっぱり知らないのですが、ラテンアメリカらしい黄色味を帯びた鮮やかな色使いで描かれる、主人公の生き辛さと生々しい美しさが印象的でした。主人公は、トランスジェンダーの女性、マリーナ。マリーナを演じるのは、自身もトランスジェンダーであるダニエラ・ヴェガです。目がすごく印象的な女優さんで、ぜひ真正面からの彼女の顔を見て欲しいと思います。レリオ監督も彼女を画面の中央に映し出すことを意識してやっているそうなので、ぜひ真正面顔を楽しんでください。

この映画の好きなところは、どこまでも現実味がある感じ。どこからかワンダーウーマンが助けに来てくれるでもないし、愛の奇跡で差別がなくなる訳じゃない。愛した人の忘れ形見が、ロッカーの奥底から見つかる訳じゃない。ひとつひとつ、大切にしたいものが奪われていく。末端から血の気が失われるような感覚の中で、それでも前を向こうとする彼女の真っ直ぐさ。理不尽さなんてどこにでも有り触れているけれど、その苦しみに真正面から向き合おうとする心の逞しさが素敵だなと思いました。どこかの誰かが体験している物語が、そのまま映像になった感じ。だからこそ、この映画には、不思議と生々しい美しさがあるのかもしれません。

 

naturalwoman-movie.com